滅菌・殺菌・除菌・消毒 なぜ「滅菌」なのか
インプラント治療は外科手術を伴うため、徹底した滅菌が非常に重要となります。 口腔内は、食事や呼吸などを通して外部から細菌が入り込みやすく、多くの細菌が存在する環境です。手術中に細菌が侵入すると、インプラント体の定着不良や感染症などのリスクが高まります。 これは、病院の手術室と同様の清潔な環境が求められることを意味します。
清潔な手術環境を維持するために、歯科医院では、空気清浄機や専用のオペ室などを設置し、空気中の細菌を減らす対策を講じています。また、手術に使用する器具や材料は、すべて滅菌処理され、患者さんごとに交換されます。


滅菌が不十分だった場合のリスク
手術に伴い、感染症のリスクがあります。感染症を防ぐためには、歯科医院の衛生管理が重要になります。
インプラント体の定着不良
細菌感染により、インプラント体と顎の骨がうまく結合しなくなることがあります。せっかく手術を受けても、インプラントが定着しなければ、治療は失敗に終わってしまいます。
術後の腫れや化膿
手術部位が細菌に感染し、腫れや化膿が起こることがあります。腫れや化膿は、痛みや不快感を伴い、日常生活に支障をきたす可能性があります。
重度の感染症
蜂窩織炎(ほうかしきえん)や骨髄炎などの重度の感染症を引き起こす可能性があります。 蜂窩織炎は、皮膚の深い部分にまで細菌感染が広がる病気で、重症化すると命に関わることもあります。骨髄炎は、骨に細菌感染が起こる病気で、治療が長期にわたる場合があります。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラント体の周りの歯茎や骨に炎症が起こる病気です。 歯周病と同様に、進行するとインプラント体が脱落してしまう可能性があります。
インプラント治療に用いる器具の滅菌方法
洗浄
血液や唾液などの汚れを、洗浄液や超音波洗浄器を用いて落とします。高圧の流水を用いたジェットウォッシャーで、目に見えない部分の汚れも徹底的に除去します。
消毒
消毒薬を用いて、人体に有害な細菌を殺滅します。
滅菌
高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)を用いて、器具を無菌状態に近づけます。特に、歯を削る際に使用するハンドピースは、複雑な構造をしているため、専用の滅菌器で内部までしっかりと滅菌します。


インプラント治療後も早めの行動を
手術部位が腫れたり、痛みを感じたりした場合は、すぐに歯科医院に連絡しましょう。 早期発見と適切な治療が、感染の拡大を防ぐために重要です。
滅菌レベル
滅菌レベルは、ヨーロッパ基準EN13060でクラスB、S、Nの3段階に分類され、クラスBが最高基準です。 クラスBの滅菌器は、あらゆる種類の被滅菌物を滅菌できるため、インプラント治療に最適です。 器具によっては、高温高圧に耐えられないものもあるため、材質や形状に応じて適切な滅菌方法が選択されます。
滅菌済みのインプラントを使用することの重要性
インプラント体自体も滅菌済みであることが重要です。滅菌されていないインプラント体を使用すると、手術部位に細菌が持ち込まれ、感染症のリスクが高まります。インプラント治療では、滅菌済みの器具を使用することはもちろんのこと、患者様と医療従事者の双方を守るための対策も重要です。例えば、手術中は、患者さんのお顔と胸元を滅菌されたシートで覆い、歯科医師や歯科衛生士は滅菌されたグローブやオペ着を着用します。


インプラント治療は、歯を失った場合に有効な治療法ですが、外科手術を伴うため、感染リスクを理解しておくことが重要です。信頼できる歯科医院を選び、適切なケアを行うことで、安全に治療を受け、インプラントを長持ちさせることができます。