オステムインプラントのガイドサージェリー

歯を失ってしまった場合の治療法として、歯科インプラント治療が広く普及しています。そして、インプラント治療において、より正確で安全な手術を行うための技術として、ガイドサージェリーが注目されています。オステムインプラントは、韓国を拠点とする世界的なインプラントメーカーであり 、国内外で高い評価を得ています。同社はOneGuide Kitと呼ばれるガイドサージェリーシステムを提供しており、日本の歯科医療においても存在感を増しています。実際、オステムインプラントは日本のインプラント市場で第2位を獲得しており、特に最終アバットメント分野ではトップシェアを誇っています。

ガイドサージェリーとは

ガイドサージェリーとは、コンピュータ支援によって作成されたサージカルガイドを用いて、インプラントを正確な位置、角度、深さで埋入する手術法です。従来のフリーハンドによる手術と比較して、より精密なインプラント埋入が可能となり、手術時間の短縮や患者さんの負担軽減にもつながります。オステムインプラントのOneGuide Kitは、キーレスガイドサージェリーを採用し、シンプルかつ安全に手術を行うために設計されたシステムです。OneGuide Kitの特徴は、以下の点が挙げられます。

正確性

コンピュータ支援によるプランニングとシミュレーション、そしてカスタムメイドのサージカルガイドテンプレートにより、正確なドリリングが可能となります。

迅速な手術

フラップレス手術(歯肉を切開しない手術)が可能となり、切開や縫合の必要がありません。また、ドリリングステップを短縮することで、2~4回のステップでインプラントを埋入することが可能となり、患者さんの負担軽減にもつながります。

限界を超える

オープンガイドにより、顎間距離が狭い患者さんでも、ガイドテンプレートへのドリルの挿入が容易になります。

エラーとドリルの発熱を最小限に抑える

OneGuide Kitは、ドリリング中のエラーとドリルの発熱を最小限に抑えるように設計されています。

インプラントの安定性向上

OneGuide Kitは、Taper 122コンセプトを採用し、ドリリングステップを短縮することで、インプラントの初期固定を向上させています。

補綴主導型アプローチ

OneGuide Kitは、「トップダウン」または「修復主導型」のアプローチを可能にし、理想的な補綴物を考慮したインプラント埋入を実現します。

オステムインプラントの種類

オステムインプラントには、様々な種類があります。主な種類とその特徴は以下の通りです。

骨レベルインプラント

インプラント体が骨レベルに埋入されるタイプ。

組織レベルインプラント

インプラント体が歯肉レベルに埋入されるタイプ。

サブマージドタイプ

1回法と2回法があり、1回法ではインプラント体を埋入した状態で治癒期間を置くのに対し、2回法ではインプラント体を埋入後、歯肉で覆い、治癒期間後に再度歯肉を切開してアバットメントを接続する。

ノンサブマージドタイプ

インプラント体を埋入と同時にアバットメントを接続するタイプ。
それぞれのインプラントは、骨の状態や治療計画に合わせて選択されます。

各インプラントのメリット

TSインプラント

初期固定と2次固定に優れており、全体的な安定性に優れています。

SSインプラント

オクタ構造と8度のモーステーパー接続により、高い接続強度を誇ります。

KSインプラント

接続部は小さいながらも深い接続構造を持ち、高い安全性を実現しています。

ガイドサージェリーに使用される主なツール

OneGuide Kitには、様々なツールが含まれています。

ツール名役割
ティッシュパンチ歯肉の切開・パンチングに使用されます。
フラッテニングドリル歯槽骨頂を平坦化し、ドリリングの安定化と角度ずれのリスクを軽減します。
イニシャルドリルドリリングとインプラントの位置決めを行い、セカンダリードリルのダブルバレルドリルコンタクトのための適切な骨切り深度を確保します。
OneGuideドリルTSIII/IVフィクスチャーに最適化されたテーパー状のドリルで、安定したドリリングを実現します。独自のドリル形状により、振動を軽減し、骨の加熱を防ぎます。
NoMountドライバーインプラントハンドピースを用いた初期インプラント埋入時に、フィクスチャーを容易にピックアップし、落下のリスクを軽減します。
フィクスチャードライバートルクレンチを用いて、最終的なフィクスチャーの位置決めを手動で行います。

ガイドサージェリーの手順

ガイドサージェリーは、大まかに以下の手順で行われます。

口腔内スキャンと診断

口腔内スキャンを行い、患者さんの口腔内の状態を正確に把握します。

CT撮影

顎骨の状態を3次元的に把握するためにCT撮影を行います。

プランニング

専用のソフトウェアを用いて、CTデータと口腔内スキャンデータを重ね合わせ、インプラントの埋入位置、角度、深さなどを決定します。

サージカルガイドの作製

プランニングに基づいて、3Dプリンターなどでサージカルガイドを作製します。

手術

サージカルガイドを装着し、ガイドに従ってドリリングを行い、インプラントを埋入します。

ガイドサージェリーでは、医師は手術の各ステップを視覚化し、それに基づいてカスタムメイドのドリリングテンプレートを作成することができます。

ガイドサージェリーの注意点

インプラントを正確な位置、角度、深さで埋入する手術法ゆえに、さまざまな注意点があります。

正確なデータ取得正確なプランニングを行うためには、口腔内スキャンやCT撮影を正確に行うことが重要です。
プランニングの精度インプラントの埋入位置や角度は、最終的な補綴物の設計も考慮して決定する必要があります。
サージカルガイドの適合サージカルガイドが口腔内にしっかりと適合していることを確認することが重要です。
ドリリング時の注意ドリリングは、ガイドに従って正確に行う必要があります。また、ドリルの発熱を抑えるために、十分な冷却が必要です。
インプラント埋入時の注意インプラント埋入時に過度のトルクをかけると、インプラントや骨に悪影響を及ぼす可能性があります。
過度の咬合力過度の咬合力は、インプラントの loosening や破折の原因となる可能性があります。
細胞組織への損傷細胞組織への損傷や外科的トラウマを最小限に抑えるように注意する必要があります。
インプラント埋入速度インプラントの埋入は、非常に低速(25〜30 rpm)で行うか、手動で行う必要があります。
インプラントの角度30°以上の角度でインプラントを埋入することは、インプラントの破折の可能性があるため推奨されません。
ミニインプラント直径4.0mm以下のミニインプラントは、構造的な剛性の制限により、破折する可能性があります。
ショートインプラントモーラー領域のみに使用されるショートインプラント(直径5mm以上、長さ7mm未満)の埋入には、注意が必要です。
ミニインプラントの長期予後ミニインプラントは、従来のインプラントと比較して強度が劣るため、長期的な予後や合併症のリスクを考慮する必要があります。
インプラントの成功に影響を与える要因インプラントの成功または失敗は、骨の健康状態、患者の健康状態、薬など、さまざまな要因に影響されます。

オフセットの概念

OneGuide Kitでは、インプラントの垂直方向の位置決めにおいて、「オフセット」という概念が重要となります。オフセットとは、インプラントの上部からガイドホールの上部までの距離のことです。OneGuideでは、10.5mmの単一オフセットを採用しています。

ドリリングシーケンス

OneGuide Kitでは、様々なドリルが用意されていますが、ドリリングシーケンスはシンプルです。最大でも4つのドリルを使用するだけで、インプラント埋入が可能です。

ガイドサージェリーのメリット

正確なインプラント埋入

サージカルガイドを用いることで、インプラントを計画通りの位置、角度、深さに埋入することができます。

低侵襲な手術

歯肉を切開しないフラップレス手術が可能なため、手術による痛みや腫れ、出血などが軽減されます。

手術時間の短縮

手術のステップが簡略化されるため、手術時間を短縮することができます。

安全性向上

神経や血管などの重要な組織を損傷するリスクを低減することができます。

審美性の向上

インプラントを理想的な位置に埋入することで、より自然で美しい歯肉を形成することができます。

患者さん満足度の向上

ガイドサージェリーは、侵襲性が低く、不快感や回復時間が短縮されるため、患者さんの満足度向上に繋がります。

ガイドサージェリーのデメリット

費用

サージカルガイドの作製費用やCT撮影費用など、従来法よりも費用が高くなる傾向があります。

術前の準備

CT撮影やプランニングなど、術前の準備に時間がかかる場合があります。

ガイドの精度

サージカルガイドの精度が低い場合、正確なインプラント埋入ができない可能性があります。

適応症

すべての症例に適応できるわけではなく、骨の状態や顎間距離などによっては、ガイドサージェリーが適さない場合があります。

費用対効果

合併症が発生した場合、費用対効果が低くなる可能性があります。

ガイドサージェリーの費用

ガイドサージェリーの費用は、使用するインプラントの種類や本数、骨の状態、手術の難易度などによって異なります。一般的には、従来のインプラント手術に比べて、サージカルガイドの作製費用やCT撮影費用などが加わるため、費用が高くなる傾向があります。

項目ガイドサージェリー従来のインプラント手術
インプラント体同じ同じ
手術費用高い低い
サージカルガイド作製費用必要不要
CT撮影費用必要場合により必要

ガイドサージェリーと従来のインプラントの比較

項目ガイドサージェリー従来のインプラント
正確性高い低い
侵襲性低い高い
手術時間短い長い
痛み・腫れ少ない多い
費用高い低い
適応症限られる広い

他社ガイドサージェリーシステムとの比較

オステムインプラントのOneGuide Kitは、他社製品によく見られるメタルスリーブを使用していません。メタルスリーブとは、サージカルガイドの穴に挿入する金属製の筒のことです。OneGuide Kitでは、このメタルスリーブをなくすことで、よりシンプルで正確なインプラント埋入を実現しています。メタルスリーブを使用しないことによるメリットは、以下の点が挙げられます。

手術時間の短縮

メタルスリーブの着脱の手間が省けるため、手術時間を短縮することができます。

患者さんの負担軽減

メタルスリーブがない分、サージカルガイドが薄く、口腔内での違和感が軽減されます。

費用の削減

メタルスリーブの費用が削減できるため、治療費を抑えることができます。

精度の向上

メタルスリーブを使用しないことで、ドリリングの精度が向上するという研究結果もあります。

視認性の向上

ドリリングサイトを直接見ながら手術を行うことができるため、より安全な手術が可能です。

冷却効率の向上

メタルスリーブがない分、ドリリング時の冷却がしやすいというメリットもあります。

顎間距離が狭い場合でも使用可能

メタルスリーブがないため、顎間距離が狭い患者さんでもサージカルガイドを使用することができます。

ガイドの作製が容易

メタルスリーブを使用しないため、ガイドの作製が容易で、費用も抑えられます。

ストローマンやノーベルバイオケアとの費用対効果

オステムインプラントは、ストローマンやノーベルバイオケアなどの競合と比較して、費用対効果に優れていると考えられます。これは、オステムインプラントが、高品質なインプラントをより低価格で提供しているためです。また、長期的な成功率や合併症の発生率も、価格の高い競合と遜色ないレベルです。

優れたガイドサージェリーシステム

オステムインプラントのガイドサージェリーシステムは、メタルスリーブを使用しないOneGuide Kitは、患者さんにとっても歯科医師にとっても、多くのメリットをもたらします。コンピュータ支援によってインプラントを正確に埋入する手術法であり、従来法と比較して、正確性、安全性、審美性、患者満足度などが向上しています。また、ドリリングステップの短縮やキーレスガイドサージェリーといった特徴により、患者さんの負担軽減にも貢献しています。しかし、費用が高くなる傾向があることや、適応症が限られることなど、デメリットも存在します。