歯を失った際の治療法の1つであるインプラント治療。インプラント治療は、従来の入れ歯やブリッジとは異なり、人工歯根を顎の骨に直接埋め込むことで、天然歯に近い機能と審美性を取り戻せることが大きな特徴です。たくまファミリー歯科では、インプラント治療について、その概要からメリット・デメリット、治療手順、費用、注意点まで、詳細に解説いたします。
インプラント治療とは?
インプラント治療とは、歯を失った部分の顎の骨に、チタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。インプラントは、体内に埋め込む人工物を指す言葉で、整形外科などでも使用されています。歯科領域では、これを「デンタルインプラント」と呼ぶこともありますが、近年は単に「インプラント」と呼ばれることが一般的です。インプラント治療の歴史を遡ると、スイスの整形外科医(歯科医師でもある)Branemark先生が、”チタンと骨がくっつく現象”を偶然発見したことに端を発します。この発見をきっかけに、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込むことで、歯の機能を回復させるというインプラント治療が確立されました。
インプラントの構成
インプラント体(人工歯根)
顎の骨に埋め込まれる、チタン製のネジのような部品
アバットメント(支台)
インプラント体と人工歯を連結させる部品
上部構造(かぶせ物)
実際に歯として機能する部分で、セラミックなどの素材で製作
これらの部品の仕組みがインプラント治療の手順や費用に反映されます。
従来の入れ歯やブリッジと異なり、インプラント治療では、周囲の歯を削ったり、支えにしたりする必要がありません。自分の歯と同じように噛むことができ、審美性にも優れているため、多くの患者さんに選ばれています。現在、インプラント治療の技術も進歩し、歯科治療では歯の欠損における有効で自然な治療法として確立しています。
インプラント治療のメリット
天然歯のような噛み心地
顎の骨に直接固定されるため、自分の歯と同じような感覚で噛むことができます。総入れ歯のように、噛む力が弱くなったり、熱いものが食べにくくなったりする心配もありません。10年後も高い残存率を誇り、長期的な安定感が期待できます。
審美性に優れている
天然歯に近い色や形のものを選ぶことができるため、見た目が自然です。金属のバネが見えることもありません。
周囲の歯を守れる
ブリッジのように、健康な歯を削る必要がありません。また、入れ歯のように、周囲の歯に負担をかけることもありません。ブリッジと異なり、インプラントは周囲の歯に負担をかけないため、健康な歯を長持ちさせることに繋がります。
顎の骨の萎縮を防ぐ
顎の骨は、噛む刺激を受けることで維持されます。インプラントは、歯根の代わりとなるため、顎の骨に刺激を与え、骨の萎縮を防ぐ効果があります。
インプラント治療のデメリット
費用が高い
インプラント治療は保険適用外のため、費用が高額になります。
外科手術が必要
顎の骨にインプラントを埋め込む手術が必要となります。手術には、痛みや腫れなどのリスクが伴います。
治療期間が長い
インプラントが骨と結合するまで、数ヶ月かかる場合があります。
メンテナンスが必要
インプラント周囲炎などの病気を予防するため、定期的なメンテナンスが必要です。
感染症のリスク
インプラント周囲炎は、歯周病のような病気で、インプラントの脱落に繋がる可能性があります。
インプラント治療手順、期間
- カウンセリング・検査
患者さんの希望や不安を聞き取り、レントゲンやCT撮影などで口腔内の状態を検査します。この段階で、患者さんの全身状態や骨の状態などを確認し、治療計画を立てます。
- 抜歯
必要な場合は、虫歯や歯周病になっている歯を抜歯します。抜歯を行うことで、インプラントを埋め込むためのスペースを確保します。
- インプラント埋入手術
顎の骨にインプラントを埋め込みます。手術は、1回法と2回法があり、口腔内の状況によって選択されます。
・1回法:インプラントを埋め込み、アバットメント(人工歯とインプラントを繋ぐ部品)を装着するまでを1回の手術で行います。
・2回法:1回目の手術でインプラントを埋め込み、治癒期間を置いてから、2回目の手術でアバットメントを装着します。2回法は、細菌感染のリスクを抑え、インプラントの安定性を高める効果があります。 - 治癒期間
インプラントが骨と結合するまで、3~6ヶ月待ちます。この期間は、インプラント治療の成功に不可欠で、骨の状態や健康状態によって個人差があります。
- アバットメント装着
歯茎を切開し、インプラントにアバットメントを装着します。アバットメントは、人工歯を支える土台となる部品です。
- 型取り
人工歯を作るための型取りを行います。この型取りに基づいて、患者さんの口にぴったり合った人工歯が製作されます。
- 人工歯の装着
完成した人工歯をアバットメントに装着します。人工歯は、天然歯に近い色や形に調整されます。
- メンテナンス
定期的な検診やクリーニングを行います。インプラントを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが大切です。
インプラント治療ができないケースについて
インプラント治療は、多くの患者さんにとって有効な選択肢ですが、インプラント治療ができない、または追加の処置が必要になることがあります。
顎の骨量が不足している | インプラントを支えるだけの骨がない場合、インプラントが安定しません。骨造成などの処置が必要になることがあります。 |
虫歯や歯周病がある | 口腔内に炎症があると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。インプラント治療の前に、これらの治療を済ませておく必要があります。 |
歯並びが悪い | インプラントを適切な位置に埋め込むことができない場合があります。歯列矯正などの処置が必要になることがあります。 |
全身疾患がある | 糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの病気がある場合、手術のリスクが高まります。病状によっては、インプラント治療ができない場合があります。 |
未成年 | 顎の骨の成長が完了していないため、治療が難しい場合があります。 |
妊婦 | 妊娠中は、手術や薬剤の使用が制限されるため、治療が難しい場合があります。 |
喫煙 | タバコは、インプラント周囲炎のリスクを高めます。禁煙が推奨されます。 |
重度の喫煙 | 多量の喫煙はインプラント周囲炎のリスクを著しく高めるため、治療が難しい場合があります。 |
メンテナンスに通えない | インプラント治療後、定期的なメンテナンスに通院できない場合は、治療が難しい場合があります。 |
麻酔ができない | インプラント治療には麻酔が必要となるため、麻酔ができない場合は、治療を受けることができません。 |
骨造成などの治療を行うことで、インプラント治療が可能になる場合もあります。
インプラント治療のトレンド
インプラント治療は、日々進化を続けています。最新技術の導入により、治療の精度向上、期間短縮、負担軽減などが実現しています。
デジタル技術
CTなどの3D画像診断、CAD/CAMシステム、口腔内スキャナーなどのデジタル技術の導入により、精密な診査・診断、治療計画、人工歯の製作が可能になっています。特に、スキャンボディと呼ばれる技術は、インプラントの配置精度を向上させ、手術の成功率を高めています。
3Dプリンター
医療用3Dプリンターの登場により、患者さんの顎の骨に合わせたインプラントや人工歯を製作することが可能になりました。これにより、より精密で個別化された治療が可能になっています。
新しい材料
セラミックなど、より生体親和性の高い材料の開発が進んでいます。新たなバイオマテリアルやコーティング技術により、インプラントの結合力や対周囲組織への適合性が向上し、治癒や統合がスムーズに行われることが期待されています。
低侵襲治療
ガイドサージェリーなどの技術により、手術の際の切開を最小限に抑え、患者さんの負担を軽減する治療法が開発されています。治療期間の短縮や痛みの軽減にも貢献しています。
美容インプラント
歯の機能回復だけでなく、審美性を重視したインプラント治療も注目されています。歯の色や形、歯茎とのバランスなどを考慮し、より自然で美しい口元を実現することができます。
テレヘルス
オンライン診療などの遠隔医療技術の導入により、通院回数を減らす取り組みも進んでいます。
インプラントスペシャリストがおすすめするインプラント歯科医院とは?
インプラント治療は、高度な技術と経験が必要な治療法です。そのため、病院選びは慎重に行う必要があります。以下のポイントを参考に、信頼できる病院、信頼関係が構築できる歯科医院を選びましょう。
設備
CTなどの検査設備が整っているか、滅菌対応など衛生管理が徹底されているかを確認しましょう。手術室が清潔で、最新の設備が導入されているかどうかも重要です。
説明
治療内容や費用について、丁寧な説明をしてくれるかを確認しましょう。メリットだけでなく、デメリットやリスクについてもきちんと説明してくれる医師を選びましょう。
症例数
多くの症例を経験している病院は、それだけ技術力が高いと考えられます。実際の症例写真を見ることも参考になります。
保証制度
インプラント治療後のトラブルに対応してくれる保証制度があるかを確認しましょう。保証期間や内容を確認しておくことで安心してお過ごしいただけます。
費用
治療費が明確に提示されているか、支払い方法について相談できるかを確認しましょう。インプラントの種類や材料によって費用が異なるため、事前にしっかりと確認しましょう。
その他
・医院が清潔で、スタッフの対応が良いか
・インプラント治療以外の知識も豊富であるか
・医師が定期的に研修会などに参加しているか
・転院を受け入れているか
・他院の歯科医との関係性は良好か(歯科医師の品性、モラル)
・インプラントのメンテナンスのみならず、口腔内の相談に真摯に対応する歯科医院か
インプラント治療後の注意点とメンテナンス方法
インプラント治療後は、インプラントを長持ちさせるために、毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要です。
毎日のセルフケア
・柔らかい歯ブラシを使用し、インプラント周囲を丁寧に磨きましょう
・歯間ブラシやフロスを使用して、歯と歯の間の汚れもきちんと落としましょう
・就寝前と起床時の歯磨き、毎食後の歯磨きを心がけましょう
定期的な歯科医院でのメンテナンス
・3~6ヶ月に一度は、歯科医院で検診を受けましょう
・専門家によるクリーニングを受け、歯周病の予防を行いましょう
・インプラントの状態や噛み合わせなどをチェックしてもらいましょう
その他の注意点
・硬い食べ物や粘着性のある食べ物は避けましょう
・インプラントだけでなく、残っている歯や歯茎のケアも大切です。 口腔内全体を清潔に保つことで、インプラント周囲炎などのリスクを減らすことができます
・定期的なメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎になり、インプラントが脱落する可能性があります
患者さんへ
信頼できる歯科医師・歯科医院を選びましょう。
豊富な経験と実績を持つ歯科医師を選び、セカンドオピニオンも活用しましょう。
症例数が多く、インプラント治療を長い期間行っている医院を選びましょう。
インプラントはメンテナンスが必須です。アフターケアまで対応している歯科医院を選びましょう。
歯科医の方々へ
インプラント治療でお困りごとがありましたら、ご相談ください。
インプラントの指導や、東京・大阪・札幌・北見で出張医として診療を行っています。
インプラント治療には、神経損傷や上顎洞への迷入などのリスクがあります。これらのリスクを最小限に抑えるためには、高度な技術と経験を持つ歯科医師を選び関係性を構築することが重要です